狼について

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 長い長い、この狼(おおかみ)の長い生の始まりは、青い蝶々に惑わされたことだった。
 彼は本当は人間の子供で、でも確かに特別ではあった。
 だけど狼になる必要なんてどこにもなかった。
 いや、必要があったと、狼は思っていたのだ。それは、いつもいつだって、
 狼になる前からずっと、特別である理由が、彼にはとても必要だった。
 彼の闇は奈落の空洞、すっぽりと抜け落ちた彼自身の欲望は、誰かの為という建前をもって初めて現れた。
 彼は彼自身なんてもうずっとずっと前からなかった。
 だから彼の代わりにに輝く、あの太陽をずっと求めていたんだ。
 けれど彼は太陽をすぐになくしてしまう。彼自身が一番、太陽の為の闇でありたいと思っているのに。
 その理由は、理由なんてないんだ。太陽が消えた理由は彼のせいではないんだ。
 けれど彼は、狼はずっとそれを自分のせいだと思っている。
 そんなだから天秤の左皿が彼を見つけて、色んな願いを彼に託したんだ。
 彼はそれを確かに果たして、罪を償った。
 彼自身がそれを認めさえすれば。
 太陽の代わりに彼の作った蝋燭が、彼の闇を照らしていた。

  • 最終更新:2018-09-25 23:57:19

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