天秤について

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 憎しみを注ぎ合う、決して釣り合ってはいけない一つの天秤。
 左皿がその運命に疑問を感じて天秤を壊して消える。
 右皿は天秤である正しさや価値を信じて左皿を追った。
 けれど左皿は自身を砕き蝋燭になった。天秤は失われた。


 サレンアーデとセレイネイドという魔物がいた。
 彼ら二人は千年一世と呼ばれている忘れられた世界の始まりの、混沌の時期に作られた王の武器でもあった。
 人の形をした美しき破壊の兵器でもあり、混乱の世を終わらせた要因の一つだった。
 七人の人間の王たちによって作られた魔物はそれぞれ互いの敵の王を殺し、そのために当時あった争いと憎しみの王国は全て崩壊したからだ。

 サレンアーデとセレイネイドはもともとは一人の魔物だった。
 けれども彼の主人である王、テスニュスは、憎しみや妬みや争う事、傷つける事が大好きだった。
 いずれ失われる自身に変わって、それを成し続ける存在が必要だった。
 魔物は神々に似せて作ったおかげで永遠を生きられる。しかしこの世界の人間が作ってしまったせいで、その魂は魔物という種の肉体にしか転生できない。
 この仕組み、この欠陥を利用して、テスニュスは彼らの魂と肉体を二つに分けた。
 そして互いに互いを憎み合うようにした。それは本能で快楽であり彼らの喜びであった。
 そして同じ存在のうちどちらか一つだけが生きようとする欲望でもあった。
 その欲望によって彼らは転生し続けながら何度も魂の片割れを殺した。

 殺し合い転生し続ける間に、同じだった魂は肉体の変質に影響を受け、彼らはだんだん違う存在になって行った。
 そしてとあるきっかけにより、セレイネイドは気付いてしまった。愛という感情に。
 そして自分たちが当然だと思っていた生きる目的、憎しみ合い殺し合う事に疑問を感じた彼は、何度もサレンアーデを説得した。
 しかしサレンアーデは聞き入れない。
 それは当然のことだった。彼は魔物として正しい価値観の持ち主であり、セレイネイドの説く愛や慈悲こそが不快であり忌むべきものであったから。
 説得を諦めたセレイネイドはこの繰り返される憎しみを断ち切るために自身の消滅を考えた。そしてより人間のようになりたいと思うようになっていった。
 そして彼は他者の手を使ってそれを成し遂げた。

 彼はとある男に出会い、その男の思い出の灯になる事を願い、彼の手を持って自身の存在を砕いて別の存在へと転生した。


サレンアーデ が兄であり天秤の右皿
セレイネイド が弟であり天秤の左皿

  • 最終更新:2017-03-23 14:10:51

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