チェスタンブル

時期的に言うと2期後3期前。





「君、学生?どこの。ああ、その指輪はもしかして」
「チェストアンブルです。東の方にある・・・」
「ああチェスタンブル魔法学院の、生徒さんか」
「チェスト、アンブル。・・・です」
「え?チェスタンブルだよね。うんうん。君もいつか戦士になるの?見えないなぁ君とってもか弱そう。まあ、戦士には君みたいなお嬢さんもいるし、もしかしたら君、すごいの?まあまあくつろいでいきなよ」
「・・・・・・。あの、これ・・・」
「ああ、学院の発行したやつ?しょうがないなー。あ、それ出されちゃったらサービスは付かないよ。オプション分は貰ってないんだから」
「ルームサービスは別にいらないです。そういうのは苦手なんだ・・・」
「ああ、そう?じゃあ309号室使って、荷物は・・・」
「もってるだけ、です。ありがとう。・・・では」
「夜は冷えるから暖炉をつけるんだよ!・・・まったく若者はみんなこうだよ、特にあそこの生徒は気難しくて困る」
 と、宿場の主人は腕を組んで唸っていたが、そんなことは知らずにルシェは、奥に行くにしたがって薄暗くなっていく廊下を進んでいた。
 旅慣れているとはいえ、自分一人で宿場の入館手続きをすることはほとんど経験していない。ルシェは世間に対していまだに不慣れな自分を恥じて、一度立ち止まりうつむいた。
 するとちりんと鈴の音が鳴って、廊下に一つだけ空いた窓から猫が入り込んだ。ルシェはその音に顔をあげると、窓の下にいる猫に近づいた。
 逃げられると思っていたが、意外にも猫はルシェの足元にすり寄ってきた。ルシェは嬉しくなり猫に触れようとかがむ。そしてよく見ると、猫の首輪にはこの宿場の名前が刻まれてた。
「君はここの猫なの?じゃあ三階に行くための階段は、この先で合ってる?なんだか緊張してしまって案内板もろくに見なかったんだ」
 ルシェになでられた猫はニャー。と一度鳴いて、その足元に丸まってしまった。
「困ったな。僕の足元は木陰じゃないよ」
 とはいえ猫はすっかり居心地よさそうにおなかを見せ出してしまったので、ルシェは仕方がないと、猫を抱えることにした。
 抱えられた猫はそれでもおとなしく。動物になかなか懐かれないルシェは本当に珍しいな。と思いながら遠い過去の事を思い出す。黒猫のような友人の事。友人と共にけがを負った猫を世話したこと。
 けれども過去に浸っていてはいつまでも動けない。ルシェはゆっくり浸かりそうになってしまった過去を振り払って来た道を戻る。
(主人に猫を返して、そのついでに道を聞こう。そうすればスムーズだよね)

 猫を抱えてルシェが戻ると、抱えられた猫の姿に主人が驚き、その猫は実は数日前に行方をくらませていたこと、主人は死んでしまったと思って悲しんだこと、猫の生い立ちなどを聞かされて、結局ルシェが部屋についたのは時計が次の日を示していたころだった。

  • 最終更新:2015-11-26 21:05:02

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